僕は寺と神社の区別がつかない。
しかしここは「吹田神社」だ。それはわかる。あの赤くて高い地図記号のアレに書いてあったからだ。
僕がこの日この時間に吹田神社に木野はただのグーゼンキマグレで、こないはずだった枝分かれのほうが大きい。
わずかなパーセントのほうを選んでしまった僕は、それ以上神社の中へ入れずにいた。そのまま帰ることもできるが、それもできずにいた。
怪物が暴れまわっている。そのまわりをはねる影が一つある。それはキツネ耳の巫女だった。なんてベタな。
どこのラノベに紛れ込んだのだという状況だ。非日常と日常のさかいめが、ちょうどこのさいごの石の階段で、そこで僕は立ち止まっていた。
キツネ耳の巫女は人差し指と中指の間にお札を挟み、怪物めがけて投げつける。怪物が苦しそうに暴れまわるのを見て、キツネ耳の巫女は、指をこう……なんかした。ぼわんとなんか星の魔方陣が出て、パッと怪物が消えた。
石畳の上に柔らかくキツネ耳の巫女が降り立つ。いかにも動物っぽく耳が動く。
キツネ耳の巫女は僕のほうを、はじめてみた。
そして、僕は恋に落ちた。
ぼくに雷が落ちた。
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